持続可能な社会を目指すGLS銀行  —  教育法のシュタイナーの考えから

持続可能な社会を目指すGLS銀行 — 教育法のシュタイナーの考えから

「お金は人のためにある」がGLS銀行(貸与と贈与のための共同銀行)のモットーである。日本でもシュタイナー教育で知られるルドルフ・シュタイナー(1861-1925年)の人智学の精神を取り入れ、ドイツ初の社会的エコロジカルな銀行として、1974年に設立された。持続可能で個人的・社会的発展を可能にすることを目指している。

GLS銀行の2016年総会。資金援助される持続可能で発展に貢献するプロジェクトが提案される。 ©Johresversammlung 2016 by GLS

GLS銀行の2016年総会。資金援助される持続可能で発展に貢献するプロジェクトが提案される。 ©Johresversammlung 2016 by GLS
写真上下:GLS銀行の2016年総会。資金援助される持続可能で発展に貢献するプロジェクトが提案される。
©Johresversammlung 2016 by GLS

シュタイナーは経済活動で得た利益はすべて、教育と文化に費やすべきだと考えた。もともとGLS銀行設立のきっかけは、シュタイナー学校をつくろうと寄付金を集め始めた人々が、GLSトロイハンドという贈与団体を1961年に設立したのが始まり。それが発展して贈与だけでなく、融資という形態を可能とするため銀行設立の運びとなった。

実際には「お金を預けたい人と、資金を調達して自分のアイディアを実現したい人を結びつけること」が仕事である。経済的要素だけでなく、社会、環境、倫理についての価値観を取り入れて業務を行っており、通常の銀行とは一線を画す。組合制の銀行で、組合員数は約4万4000人、社員は約530人である。

1970、80年代は小規模だったが、90年代半ば以降「自分のお金を、価値あることに使いたい」と願う人々が増え、大きく伸びた。設立当時はは定期預金に来た人に利子を寄付するよう声をかけ、多くの人が全額または利子の一部を寄付していたが、最近は利子が低いことや時代の流れもあり、しなくなったという。

2016年年次総会でランチの準備をする出席者たち ©Johresversammlung 2016 by GLS
2016年年次総会でランチの準備をする出席者たち
©Johresversammlung 2016 by GLS

 

融資先は「エネルギー」「住居」「食料」「教育と文化」「社会と健康」「持続的経済」の分野を対象とし、「原子力発電」「武器」などには融資しないと明記している。すべての融資先を公開しており、「透明性」は重要な指針のひとつである。2015年は2万2000の企業や団体に、21億ユーロを融資した。マイクロクレジットも実施しており、通常の銀行では融資を受けにくい人も対象となっている。これらの活動により2012年、「ドイツ持続可能な企業賞」を受賞した。

GLS銀行では「持続的経済」についての講演や、有機農法を推進する協同組合の説明会などさまざまな催しが開かれている。銀行という枠組みを超えて、社会を変えていこうという意志がうかがえる。2009年には社会的銀行のネットワーク「価値観に基づく銀行国際同盟(GABV)」が結成され、GLS銀行など世界28金融機関が、人間を第一に考えた持続可能な銀行として協力関係を築いている。残念ながら日本は入っていない。

持続可能な経済を感じさせるゆったりエコロジカルな銀行ロビー

持続可能な経済を感じさせるゆったりエコロジカルな銀行ロビー ©Taguchi Riho

GLS銀行の理念に賛同し、私も組合員になった。1口500ユーロから何口でも出資でき、出資額にかかわらず組合員は平等に1票持つ。組合員をやめると出資金は全額戻るが、脱会の申請から返金まで5年かかる。多くの人が急に脱会して出資金を引き上げると、銀行の存在が脅かされるためだ。それでも多くの人が組合員となっているところに、GLS銀行への信頼の高さがうかがえた。

ボーフムにあるGLS銀行本社は建物の中にふんだん木材が使用され、中庭はシュタイナーのコンセプトを生かした心休まる空間となっている。社員食堂では地元産でオーガニックの素材を使った昼食が出され、紅茶やコーヒーもフェアトレードである。社員が生き生きと、誇りを持って働いていると感じた。

シュタイナーの人智学を生かしてデザインされた中庭 © TAGUCHI Riho
シュタイナーの人智学を生かしてデザインされた中庭
© TAGUCHI Riho

トップ画像:GLS銀行を象徴する発電自転車 © Johresversammlung 2016 by GL

全国信用金庫協会機関誌「信用金庫」2016年7月号より転載