日本の脱原発にドイツからも連帯「さよなら原発デュッセルドルフ」

日本の脱原発にドイツからも連帯「さよなら原発デュッセルドルフ」

福島で起きた原発事故の大惨事から6年目の3月11日が近づいてきた。
脱原発団体「ドイツ公益社団法人 さよなら原発デュッセルドルフ(以下SGD)」は、ドイツの市民団体と共催で、おしどりマコさん(調査報道ジャーナリスト・お笑い芸人)の講演会の準備中である。マコさんは、東京電力福島原発事故後から入念な取材を続けているので、毎年ドイツ各地から講演をしてほしいと招かれるのだ。3月には、SGD独自のデモや講演会、チャリティーコンサートも開く。マコさんの講演会を共催するドイツの団体は、2016年に参加した核燃料供給・輸出に抗議するデモで知り合った。2015年3月14日には、ドイツのデュッセルドルフ市で、脱原発デモ「フクシマは警告する-世界中で脱原発を-NRW州(注1)も!」をドイツの諸団体と共催した。
「再稼動反対!」「さよなら原発!」
路面電車も走る大通りやライン川沿いの歩行者・自転車天国では、ドイツ語だけでなくSGDの日本語のシュプレヒコールも響き渡った。このように、ドイツで積極的な脱原発活動を続けるSGDは、どのようにして誕生したのだろうか。3名の産みの親に設立秘話を聞いてみよう。

脱原発活動が公益に奉仕するドイツ

藤井隼人さん(在独47年目、前理事)は、2011年3月11日の東京電力福島原発事故以来、50名ほどにメールで情報を流していた。特に日本では情報量が少ないうえ偏っているので、それを補いたかったという。2012年の夏、ちょうど大飯原発再稼動反対行動が最高潮の時期だった。藤井さんから情報を受け取ったフックス真理子さん(在独31年、理事)は、「私たちも日本にいたら参加できるのにね」と御礼を書きながら、ふと「ここ(ドイツ)で行動すればいいんだ!」と思いついた。日本での若い頃は、ノンポリで安保反対のデモにもでたことがなかった藤井さんだが、「今度ばかりは日本も方向転換をすると思ったのに、再稼動とはひどすぎる」という思いは、「嘆くだけでなく何かやろうよ」というフックスさんの言葉に、即賛成するほど強かった。ちょうど高岡大伸さん(在独18年、理事)からも原発に対する怒りのメッセージが届いたので、フックスさんが「個人で怒らず組織を作ろう」と誘ったところ、快諾してくれた。こうして3人は2012年7月に、日本の脱原発をドイツから応援するためのSGDを結成した。

片側車線いっぱいに広がって進むデモ行列 ©️KAWASAKI Yoko
片側車線いっぱいに広がって進むデモ行列 ©️KAWASAKI Yoko

翌8月の第一回デュッセルドルフ脱原発アクションデーでは、初めてのヒマワリアート・パフォーマンス・デモを開催。日本人主体の参加者が300人集 まり、ドイツのメディアからも大きな反響があった。NPO設立手続きに詳しい参加者の一人が申請を引き受けてくれたおかげで、2013年には、脱原発活動の公益法人として認められ、税法上も様々な特典を与えられた。

会員たちの祖国への熱い想い

SGDには、多様な職業、特技をもった幅広い年齢層の会員が28名いる。
「日本の状況を聞くにつけ、何かせずにいられない」
「日本のすばらしい景観を子どもや孫に引き継いでいかねば」
など、ドイツで日本のために何かしたいと考えて入会した人たちだ。唯一のドイツ人会員で日本語が達者なペートラ・アルトさんは、毎年「第二の故郷の日本」を訪れる。SGD結成の半年前から「antiatom-fuku」という独自のサイトを作り、福島の情報などを発信していた。彼女は、SGDホームページのドイツ語版や渉外も担当している。会員たちは、通常メーリングリストを通じて情報発信や議論などを行なっている。会合は会員の希望をきいて、最も参加者が多い日を選ぶ。講演会やデモのときには手弁当で集ま り、チラシやアンケートの作成、署名、募金などから飲み物の用意、通訳、映像の撮影や翻訳字幕の編集などまで、各人ができる範囲で持ち味を生かした活動がSGDの強みだ。会員の広い人脈によって、IPPNW 理事のアレックス・ローゼン医学博士、冒頭で紹介したおしどりマコさん、「のりこえネット」共同代表の辛淑玉さんなど多くの方々を招いて、通訳付講演会を行ってきた。日本で起きている原発震災を「対岸の火事」と捉えず、講演会やデモに参加、支援してくれるドイツ人が多いことが何よりもありがたく、活動の励みになっている。

ドイツでは、警察が「脱原発デモは良いことだ!」と全面協力

2015年3月のデモは、ドイツの諸団体から一緒にやろうという誘いを受け、初めて共催した記念碑的なデモで、700~800人が行進した。反核・脱原発 活動を既に長い間続け、成果をあげてきたIPPNW、BUND、.ausgestrahlt、Landeskonferenz der Anti-Atom-Initiativen(以上注2に列記) との連携からは、多くの学ぶべきことがあったと高岡さんは振り返る。その準備には、複数のSGD会員も参加して電話会議を繰り返し、各団体の役割と費用分担、デモの開始と終了点の特設舞台で音楽家が演奏する題目の著作 権までも考慮に入れて、計画を詰めていった。これまでSGD単独デモでは、すべてを担わざるをえなかったフックスさんは、.ausgestrahltの専門家が一切を取り仕切ってくれたのでとても楽だったと語る。ドイツで反原発デモを行う際に、何よりもありがたいのは、地元の警察が非常に協力的なことだ。「警察官も脱原発に賛成だから、本当に市民の味方なんです。『こっちの道を通るほうがいいよ、人が多いし目立つから』などと、いつも親切にアドヴァイスして応援してくれます」と、フックスさん。

片面が日本語なので人気があり、デモのスタンドでとぶように売れたジュートバッグ。一枚につき50セントは日本のIPPNWに寄付される。©️KAWASAKI Yoko
片面が日本語なので人気があり、デモのスタンドでとぶように売れたジュートバッグ。一枚につき50セントは日本のIPPNWに寄付される。©️KAWASAKI Yoko

その年の4月には、毎年恒例となったイースター行進があった。天気に恵まれ、参加者はどんどん増えていった。モットーは平和のデモ。核兵器反対、武器の輸出と生産ストップ、もっと身近で安全なエネルギーを求める消費者が増えることは、まさに今の日本にも必要なことと、SGDのメンバーも11名が参加した。

世界のネットワークとつながろう!

「デュッセルドルフ周辺の在留邦人は7000人と言われていますが、ほとんどが企業派遣の方で、心の中では賛同されても日本的シガラミで声を 出せない方が少なからずいます。」そんな人々にも届くようにと、高岡さんはFacebookやホームページなどで随時情報を公開し、応援を呼びかけている。 Facebookのアクセス数が11万を超えた週もあり、潜在的にかなり多くの人が脱原発情報を求めていることが伺える。

一方、声を出す側にも悩みがある。「日本での同窓会で原発の話題を出すと必ずしらけるし、お前はドイツに長いからそんなこというんだと言われま す。その話題はやめたほうがいいという忠告もありますが、言わなければ推進派と同じだから、経済よりも国民の命や健康のほうが大事だろうと答えます」と藤 井さん。筆者にも似たような経験がある。また、SGDのメーリングリストにおける活発な議論の中では、「経済大国といわれる豊かな日本の子どもたちのために、ドイツの年金生活者から寄付を募れるのか」といったジレンマがでてきたりもした。そうはいっても、原発問題に向き合う際に、日本に向けては海外在住者の視点、ドイツ市民には日本人の視点を提供するSGDの意義はやはり大きい。SGDはドイツや日本国内の団体だけでな く、よそものとして共通の悩みを持って行動する在外邦人の脱原発ネットワーク「よそものネット」とも連携している。

そして今、みなさんにも呼びかける。「ご一緒に、原発のない社会への一歩を踏み出してみませんか?」

デモの終着点のSGDスタンド ©️KAWASAKI Yoko
デモの終着点のSGDスタンド ©️KAWASAKI Yoko

小出裕章先生から「さよなら原発デュッセルドルフ」へのメッセージ

トップ写真:デモの最後に特設舞台から即時脱原発を訴えるSGDのメンバー ©️KAWASAKI Yoko

注1
ドイツ連邦共和国最大の連邦州Nordrhein-Westfalenの略。デュッセルドルフ市は州都。
注2
.ausgestrahlt ドイツ国内の反原発 活動を、アイディアや企画段階から現地での実践行動まで、あらゆる方面からサポートする反原発組織。2008年設立の公益社団法人で現在約20名のス タッフを擁し、旗やバッジなど脱原発グッズも販売する。東電福島原発事故から4年後には、ドイツでは190都市が「福島からの警告」というデモを行った 。放射能汚染された故郷に戻れない日本人との連帯を示し、原発が今なお稼働中のドイツ政府に抗議するためだという。
IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部、公益社団法人IPPNWは1980年設立。1985年ノーベル平和賞受賞。ドイツ支部では、東電福島原発事故後の低線量被曝による健康被害についても国際会議の開催など多くの情報発信を続けている。
BUND 1975年設立の自然・環境保護連盟、公益社団法人。会員数は約52万人で収入約25億円のうち8割は寄付金と年会費。
Landeskonferenz der Anti-Atom-Initiativen 連邦州レベルの反原子力活動会議。NRW州や隣接州の反原発、環境保護などの団体が、話し合いや政府への要請を行う。

<WEBRONZA2015年4月掲載記事をもとに加筆修正>