再生可能エネルギー20%を目指すEU

再生可能エネルギー20%を目指すEU

デンマークやイギリスだけじゃない。ベルギーも、洋上発電事業で追いかける。

太陽の光を受けて、洋上見渡す限りにきらめく風車の群れ…再生可能エネルギーの明るい未来を思わせるこんなイメージを、ポスターや広告などで見かけることが多くなった。まだ日本では憧れの未来像のように見えるだろうか。欧州では、それは最早、現実に目の前に広がる光景となってきた。長い海岸線を持つ島国デンマークやイギリスといった国々では、洋上での風力発電が再生可能エネの花形だ。国をあげて期待され、精力的に先行投資され、先駆者ノウハウの蓄積が進む。そんな国々を追うように、ベルギーも動き出した。

欧州連合(EU)は、2009年、「再生可能エネルギー指令」 を採択して、2020年までにEU全体で全エネルギー消費の20%を再生可能エネルギーで賄うという目標を立てた。再生エネでは、太陽光、風、河川、地熱、バイオマスなどが資源となるが、こうした資源が豊富にある国もない国もある。国のエネルギー政策上、急激な軌道転換が容易でない国もある。そこで、各国が一斉に一律20%というのではなく、それぞれの実情に鑑みて、それぞれの目標が全体で20%となるようにしてあり、最終目標とそれに到達するための中間目標値を定め、詳細な計画を建て、定期的に達成度と進捗状況を報告することを義務付けたのがEUのやり方だ。国は指針を示し、その方向への投資がしやすいように、中小企業でも参入しやすいように環境を整える。2014年度の報告によれば、スウェーデンなどは予想通りの優等生だが、ベルギーも、最終目標値13%に対し、2013年度中間目標として設定された5.4%を大きく上回る実績7.9%を達成して好調だ。その有望株として注目されるのが、洋上発電のパークウィンド(Parkwind)社だ。ベルギーにたった100㎞足らずしかない北海海岸線。同社はその沖合50㎞ほどに広がる洋上発電事業全般を司る。

ベルギーオステンドの港に到着した風車の基礎部分 ©Parkwind
ベルギーオステンドの港に到着した風車の基礎部分
©Parkwind

「洋上風力発電所」ときいて、筆者が真っ先に思ったのは、「タービンや支柱のメーカー」とか、「風車を海の中に設置する建設業者」、あるいは、「再エネ電力販売事業者」だった。しかし、メーカーなら、隣国ドイツやオランダに技術力の高いところがいくつもあり、小国ベルギーが優れているとは思えない。電力販売業者は今ではいくつもあって競争しているが、Parkwindの名前は聞いたことがない。Parkwindはいったいどういう会社なのだろう。

考えてみれば当然のことだが、洋上であっても、それは「発電所」。事業計画を建て、投資を仰ぎ、建設し、資金回収して利益を生まなければ事業として成り立たない。同じ発電所でも、火力や原子力などと異なり、投資額、回収期間、リスクに未知数が大きい。発電技術以外にも、建設や送電に関わる技術やノウハウも必須だ。洋上であることから、文字通り波風に耐え、海底ケーブルで安全に送電しなければならない。必然的に資金規模は大きく、リスクが高いので、民間の投資家や銀行からは投資を得にくい。その上、ベルギーのような小国(人口約1000万人)内だけで、適切なノウハウや技術を持った人材を集めることも難しいので、国外にも門戸を広げなければ不可能だ。日本では、民間の活力の名の下に、小規模な民間事業者が、草の根的に小規模な発電所を始めているようだ。再生エネの世界では、必ずしもスケールメリットが重要ではないこともわかっている。ただ、小規模な資金による民間事業者を競争させても、技術もコストも採算レベルに達する前につぶれてしまう。環境理念を中核にすえ、長期的展望に立った資金投入が不可欠。これにより、ある程度の事業規模にし、先駆者ノウハウを集積していかねば、事業としての開花期を迎える展望が立たない。

風車の基礎部分が海に建設される © MennoMulder.com
風車の基礎部分が海に建設される
© MennoMulder.com

Parkwindは、90年代から産声をあげ始めながら苦戦していたベルギーの洋上発電事業をまとめる形で2012年に発足。その母体は、意外にも、大手スーパーチェーンだ。親会社Colruyt(コルロイト、本社ベルギー)は、ベルギーやフランスなどで、生活者の視点による、環境に配慮した品ぞろえで評判のスーパー約1000店舗を展開する。コルロイトの持ち株会社Korys(コレイス)もまた、Parkwindに出資しているが、「地球環境のためになる事業は必ず利益を生む」との企業理念のもと、次世代のために持続可能な価値を創出することを目指す事業にのみ投資するという徹底ぶりだ。Parkwindはこれらに加えて、公共セクターからもベルギー蘭語自治体政府が出資しているが、れっきとした営利追求の民間企業だ。EUでは、「環境か、利益かを天秤にかける時代は終わった。地球環境に寄与する事業は必ず経済的に見合う」として、「グリーンエコノミー」や「循環型経済」の実現を提唱しているが、まさにこれを実践する企業といえるだろう。

現在2つの洋上発電所(Belwind 風車55基,、Northwind 同72基、合計発電力381MW強)を運営し、40万世帯以上に電力を供給。2017年春の稼働を目指して、今年4月に3つ目のNobelwind(50基、発電力165MW)を竣工。9月22日、その土台設置を終えた。完成すれば3つの発電所による総発電力は546MW。小型原子炉相当を賄えるようになる。一基あたり8MW級の大型風車も出てきたので、今後は平均的原子炉1基分の洋上発電所建設も可能になるという。

Parkwindの社員は51名。ほとんどが40才以下。オフィス内を歩くと、若く溌剌とした人材が、未来事業に誇りと夢をもって取り組んでいる。「洋上風力発電事業は、長期的で大きな投資額が必要なので、公的資金がいまだ欠かせないが、今、まさに、公的資金投入がなくても利益事業として成立するターニングポイントにさしかかりつつあります。原子力や化石燃料などと比べても、充分に価格的に見合う競争力がついてきているのです。にも関わらず、原子力や化石燃料にしがみついている国に未来はない…。」こう語ったくれたのは、CEOのフランソワ・デゥ・レーウ氏。笑顔は優しくても、事業に対する真剣勝負がびんびん感じられる辣腕事業家だ。

「海は、原子力に代わる再生可能エネルギーの宝庫。Parkwindはその中でも洋上風力発電を、設計から運営までトータルに管理するユニークな企業。エネルギーという側面で、次世代のためによりよい世界を作ることに貢献できる、スケールのでっかい事業に取り組んでいることが誇りです。オフィスは小さいけれど、事業規模は大きいので、いろいろな国のさまざまな企業が参画している。未来に向かって成長していこうという意欲と機動力あふれる世界中の仲間とともに歩めることがやりがいです。」デゥ・レーウ氏は、こう話し終わると、ランチを一緒にと待っていた奥様と子どもたちとともに、うれしそうに街中に消えて行った。

風車の設置を待つ基礎部分 © MennoMulder.com
風車の設置を待つ基礎部分
© MennoMulder.com

トップ画像:北海沖にきらめく洋上発電所の風車 © MennoMulder.com

i. Directive 2009/28/EC of the European Parliament and of the Council of 23 April 2009 on the promotion of the use of energy from renewable sources and amending and subsequently repealing Directives 2001/77/EC and 2003/30/EC (Text with EEA relevance)